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売野機子『ロンリープラネット』

 先輩役者さんに薦められ、売野機子『ロンリープラネット』を読む。

 久々に、目の前で何かがひらく感覚。
 
 いわゆる「イケメン」ながら中身の伴わなさに気後れするコミュニケーション下手の主人公が、売れっ子占い師の姉に間違われ占い(のような助言)をファンに与えていく羽目になる、というのが話のあらすじ。

 これだけ読むと、はちゃめちゃコメディを予感するんですが、いやいやメッタメタにやられましたとも。えぐるえぐる。

 占い、っていうのが一応キィワードなんですが、「占われたい」人々は何を求めているのか。「占い」とはつまりなんなのか。僕らは何を求めているのかっていう話でして。

 作中で占い師である姉が「占いは圧倒的な肯定であり救い」であると断定してしまうんだけど、凄く共感。
 確実性や論理から逸脱したところにある問題であればあるほど、そういう風に決まっているって安心感やこれこれこうだって理由がほしいんだよね。で、占いはそれをくれるわけだ。恋愛や人生や未来や色々。
 で、仕方がないって納得したり、諦めたり、勇気をもらったり……圧倒的な救い。確かになー。

 誰かが「宗教とは事象を納得するためのシステムでしかない(科学も同様)」ってことを言ってたんですが、占いも同様で、結局みんな自分の身に起こる不幸や幸福に言い訳や理由が欲しいんだよね。

 「星のめぐりが悪いから今の私は不幸なんだ」「運命の人と出会える運勢だから、今の彼とうまくいってるんだ」
 でもそれは裏返せば「星のめぐりがよくなったら不幸じゃなくなる」「彼とうまくいかなかったのは彼が運命の人じゃなかったから」っていう理由ができあがるわけで、そういう安心とか納得を占いは与えてくれている。

 でも確実なものは何も無いのだけど。
 しかも僕たちは正しい道も歩けない。
 
 登場人物の一人であるキャビンアテンダントの女性が一途に突っ走りすぎるエピソードがあって、個人的に僕はそれが一番胸に来たのだけど、「こういうのが男に恐怖を与えてるってわかっている」「でも止まらないんだ」「止まらないんだ」っていう彼女の台詞にそういう悲しさが溢れているように思う。
 彼女は「こうすれば付き合える」「こうすれば彼と幸せになれる」っていう確実なセオリーや裏づけ(それは占いだったり雑誌のコラムだったりするわけだけど)の通りに行動しているんだけど、彼の気持ちは離れていく。
 「こうしてはいけない」ってわかっているんだけど、彼女の感情や気持ちは正しい道を進んでくれない。

 僕たちは道筋を知っているはずなのに、いつも思ったとおりの目的地に想定したようにつかない。幸せはいつもどこか別の道の先にある。
 でも、それでも、そんなときでも「占い」が肯定してくれる。

 「あれは正しい道ではなかったよ」
 「あれは目指すべき目的地ではなかったよ」

 「だから仕方ないんだあなたは(私は)悪くないんだよ」と。

 ……「占い」は多分別の言葉に置き換えてもいいんだろう。論理だったり経験だったり、噂だったり常識だったり、主人公にとってそれは「少女マンガの台詞」だったりして。
 結局僕たちはそういう地図や目的地や「なにか」を旅の道連れにしないとうまく歩けない、フラフラと惑う星みたいなもんなんでしょう。

 うーん。

 誰かとうまく関われない、そんな人たちばかり出てくる物語で、みんながみんなそれぞれの地図や羅針盤を持っている。
 姉は占いを道具に人と関わる道を選んだし、マンガで思いを伝える漫画家や、昔の思い出と借り物の台詞で漂流してきた主人公や、十人十色。
 でもみんな、どこかやっぱり他人と関わるのが上手ではなくて、誰かに伝えたり受け取ったりするのに何かが必要なんでしょうねえ。
 切ないけれど。

 でも、やっぱりどうにかして「ちゃんと関わりたい」んですよね。
 主人公のラスト「そろそろ誰かと深く関わりたいんだよ……」という台詞はそんなみんなの言葉を代弁しているんじゃないですかね。


 同作者のもう一つの短編集も読んだのですが、その感想はまた後日。


 
ロンリープラネット (KCデラックス)ロンリープラネット (KCデラックス)
(2011/11/30)
売野 機子

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